2399人が本棚に入れています
本棚に追加
一度自信をなくすと、その後何もかもうまくいかなかった。
並びながら手を繋げたら良いなって。
あわよくばお化け屋敷とかの暗闇でキスできたら良いな、なんて。
馬鹿らしい。おとぎ話みたいだ。
現実は隣で歩くのが精一杯なのに。
俺が何かしようとしても、タイミングが合わなかったりして上手くいかない。悠に避けられているのか?と疑うレベルだ。
今こうしている間にも、俺は手を繋ぐことを試みている。
距離が近い。この感じで自然に繋げばいけるのではないか。
そう思ってドキドキしながら、悠の右手に俺の左手を伸ばしかけた時だった。
「…っ少しあついね。向こうでアイス売ってるから俺が買ってこようか」
そう言って悠の右手は少し離れたアイスの屋台を指差す。
まただ、また遠くなった。
もうこれ確信犯じゃないか?そうとしか説明がつかないのでは?
だが俺はそんな負の感情をおくびにもださなかった。それはただ、悠に嫌われたくないから。
「ああ、ありがとう。…じゃあ俺はそこのベンチで待ってていい?少し疲れちゃって」
ちょっと、一人にさせてくれ。
そんな言葉は奥歯で噛み潰した。
「わかった。行ってくるね」
「…ありがとう」
ダメだ、笑え。
めんどくさいやつって、重いやつって思われるだけだ。そう思われるのだけは嫌だった。
ベンチに座って目線を膝に落とす。俯くと、重力が急に強くのし掛かる気がした。爪先から伸びる影が、不安定に揺らいで見えた。
難しいな、恋って。本気になる程難しい。
「恋人らしさ」ってなんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!