「らしさ」

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「てっきり颯人はさ、そういう性的なことが嫌だと思ってたから。キスができるのだけでも奇跡だと思ってた」 「前から不思議ではあったんだよな。性的な接触に嫌悪感はあるのに、悠とのキスは全然嫌じゃなくて。……結局さ、色々言っておきながら好きな人なら良いっていう都合のいい奴なんだよ俺は」 「都合が良くなんてないよ。ほとんどの人は好きな人と触れ合いたいと思うよ。まあ颯人のそんな相手に選んでもらえて光栄だけどね」 そう言って悠は俺の手を取り、甲にそっと唇を落とした。チュッと触れる感触が生々しい。唇を甲に触れたまま、悠は上目遣いで俺の目を見た。 「このまま俺に、全てを捧げてくれますか?」 「……っ!」 「俺の全ても捧げるから。颯人の全て、ちょうだい?」 甘く、それでいて俺に乞うような瞳を向けられる。その熱量に、欲情に、色気に、俺は完全に当てられてしまった。 俺は悠に口付けられた手を引き、今度は逆に俺が悠の手をとって甲にキスをした。 突然の俺の行動に悠がギョっとしたのがわかる。だが俺は唇を悠の甲に寄せたまま、上目遣いで話しかけた。 「こんな俺で良ければ…全部貰ってほしい。だから、悠の全てが欲しい。確信したいんだ、悠が…俺のものだって」 恥ずかしくて燃えるように顔が熱くなるのを自覚しつつも、俺は思が想いの丈を伝えた。 すると悠は心から嬉しそうに、とろけるような目をして返事をする。 「…いくらでも! 互いの身体を隅から隅まで食べ尽くすように、愛し合い、満たされよう」 そのまま俺は悠に手を引かれて、遊園地を後にした。 人の目なんか気にせず、しっかり指を一本一本絡めて、互いの感触を確かめ合った。
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