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悠のが俺の胎内に出された瞬間、えもいわれぬ幸福感を覚えた。俺と悠がまるで一つに溶け合ったかのような。このまま一体化できればどれだけ幸福なことだろうか。
こんな感覚は初めてだった。
おぼろげな思考で必死に記憶をつなぎとめる。きっとこの感覚は忘れちゃいけないものだ。
今まで性的接触に嫌悪感を抱いてきた。その行為に意味を見出せなかったからだ。年頃の男にしては性に淡白すぎるかもしれない。それは自覚していた。
自分は少しおかしいのではないか、そう何回も自問自答した。
でも、今分かった気がする。
これほど全身全霊で愛される行為は、幸せに決まっているのだ。畏った意味を見出そうとすることが無粋なのだ。
愛し、愛され、理性と本能がせめぎあいながらも身体を重ねる。そんな体験をできる相手こそ、きっと唯一無二だ。
俺を抱く悠の背中に腕を回す。スルリと撫でると、そこにはどこまでも広い背中が広がっていた。
この背中が愛おしくて堪らない。
もっと愛されたい。
気づけば俺たちは再び唇を、身体を重ね、再び愛し合っていた。
その営みはいつまで続いただろうか。
ただ、空が白み始めた頃意識を失ったのだけは覚えている。
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