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俺が再び意識を取り戻した時、空はオレンジ色に染まっていた。むくりと起き上がって辺りを見渡す。
そこにはすっかり着替えて、窓辺に座った悠がいた。
悠は夕焼けを無表情で見つめており、その横顔はどこまでも静かだった。俺が起きたことに気付いてこちらを見る。
俺は立ち上がろうとしたが腰が砕けて動けなかった。その様子を見て悠は優しく微笑む。
「初めてだから腰への負担が大きいよね。ごめんね、無理させて」
そのまま悠はベッドに潜り込み、俺の腰をソッと抱いた。俺だけ裸なのがなんだか恥ずかしい。
「…別に。気持ちよかったからいいし」
「そ? 俺もすっごく気持ちよかったよ。颯人かわいかったし最高だった」
ふと自分の身体を見ると、体中噛み跡やキスマークだらけなのに気がついた。
「ちょ、なんだこれ! めっちゃ痛々しいじゃん!」
「俺のものって印つけたくて。つけすぎちゃった」
テヘ、というように笑う。その顔を見てなんだか許してしまった。
俺たちは静かに夕日を見る。
きっとそれは人生で一番美しい夕日だった。
いや、きっと俺たちはこれから何回もこの「一番」を更新していくのだろう。二人でいれば些細な日常がかけがえのないものとなり、一番となる。
これから俺たちは何度も道を間違え、すれ違い、葛藤するだろう。それでも最終的には、この夕日を分かち合うのだと俺は信じている。
これからも自分の信じる道を真っ直ぐ歩こう。
俺の隣にある、この確かな温もりだけは見失なわぬように。
「悠」
世界で一番愛おしい名を呼ぶ。
「どうしたの」
「愛してる」
「…俺も、颯人のこと愛してるよ」
何回でも、お前の隣で。
【完】
p.s.
この後あとがきあります。
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