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「もしかして彼がその…」
俺が聞くと氷室は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「うん、弟の和也だよ」
「兄さんの友達?よろしく」
そう言って弟の和也くんは俺に右手を差し出す。俺は握手を返したが、和也くんの左手に小柄な高校生っぽい男の子が絡みついている。
その子は薄い茶色の髪をしており、とても可愛らしい顔立ちだ。その子は甘えるような媚びた目で和也くんを見上げている。
「和也、部屋戻ろ。僕まだ遊び足りない」
そのままその子は和也くんの左腕をぐいぐい引っ張る。
「やめて小春。俺は兄さんの友達と話しているんだ」
和也くんは小春と呼ぶ男の子を冷たく睨んだ。その目に小春くんはグッと黙り込む。なんだろうこの違和感は。この二人はどういう関係なのだろうか。
「ごめんね俺の‘友達’がうるさくて。名前は?」
「俺は蒼井颯人。今日は無断で来て悪い」
「いいんだよ。それより俺と‘友達’になろうよ」
すると氷室が和也くんをキッと睨みつける。
「やめろ、蒼井をお前の‘友達’と一緒にするな!」
「何言ってんの。兄さんの‘友達’なんだから俺の‘友達’になってもいいよね?それに蒼井くんって、凄く…ふふ。やっぱり俺たち似てるよね」
「蒼井は誰とも共有しない。俺だけのものだ!」
なんでこの二人はこんなに熱くなっているんだ。‘友達’って?考えていると小春くんから視線を感じた。彼は俺をじっと睨んでいる。敵意剥き出した。なんだこの異様な空間は。なんだか俺は気分が悪くなった。
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