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「お前良い加減にしろよ」
思ったより強く叩いてしまったらしい。俺の右手がジンジンと痛む。和也くんも左手で叩かれた頬を呆然と抑えている。
「お互い割り切った関係なら‘友達’をいくら作っても俺は別にいい。というかどうでもいい。だけどどう見ても小春くんはそうじゃないだろ。小春くんの思いに気付いてるのに‘友達’になるなんて残酷だ」
そこまで言い切って俺は我に帰る。何言ってんだ、恥ずかしい。他人のことにズケズケ踏み込んで。穴があるなら入りたい。だが言ったことに偽りはなかった。
周りを見ると氷室も、和也くんも、小春くんも呆然としていた。小春くんの涙は止まっている。
「ごめん、俺何言ってんだ。恥ずかしい…」
「そんなことないよ」
俺が言うと氷室は俺の頭を撫でた。
「確かに和也のしたことは間違っている。小春くんと今一度しっかり話をするべきだ」
そう言って氷室はしっかりと和也くんを見つめた。そこには「兄」の姿をした氷室がいた。
和也くんは黙って小春くんの腕を引く。そのまま部屋に入っていった。まさかこの後‘遊ぶ’わけではないだろう。しっかり話し合うと思う。
そんな二人の姿を見て俺も氷室もどこか安心していた。
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