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和也くんと小春くんを見送った後、俺たちも氷室の部屋でお茶を飲んでいた。
家で飲む紅茶と少し味が違う気がして美味しい。
「和也のこと、はっきり言ってくれてありがとう。うちは幼い頃に母が亡くなっていて、父親も仕事で家を開けていることが多い。誰も注意することができなかったんだよ」
「氷室が注意すれば良かったんじゃないか?」
俺が指摘すると氷室は気まずそうな顔をした。
「それは…あの。ほらさっき言ったじゃん。俺と弟は悪い意味で似てるって…。だから色々言えなくて」
そう言って氷室は俯く。
それで色々俺は察してしまった。こいつもか。
「お前最低だぞ」
「わかってるよ!でも、今は!今は蒼井一筋だから!」
「……」
「もう気付いてるよね?好きなんだよ」
気づくさ。流石にいくらなんでも気づく。気づいてたよ。
「愛してるよ、俺もなんでか分からないくらい蒼井のことが好き。蒼井のことを知ってからセフレとはみんな手を切った。だから、だから…」
そう言って俺を抱きしめる。
「嫌いにならないで…」
イヤホンを届けてもらった時からおかしいとは思ってた。でも気のせいだと思おうとして、氷室からの気持ちに蓋をした。
でも、もう無理だ。
氷室が蓋をこじ開けてしまったから。
「愛してる」
氷室からの言葉に何もいうことができない。氷室の胸に顔を埋めているため、氷室の顔は見えない。でも氷室は震えていた。泣いているのか。
泣いているらしい氷室を前にして、すぐに断ることは出来なかった。
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