手早い兄弟

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「俺はホットコーヒーください。あっ、あとこのチーズケーキ一つお願いします」 「かしこまりました」 店員さんが俺の注文をサラサラと書き取っていく。チラリと小春くんに視線を向けるとまだ俯いたままだった。 「君は?なんか頼む」 「僕は…水でいい」 小春くんがそういうと店員さんは頷いて静かにテーブルを離れた。俺はテーブルの水が入ったコップにそっと口をつける。冷たい。 「それで、話って」 俺が語りかけると小春くんはボソボソと話し出した。 「前も、こういうことがあったんだ」 そういえばさっきそんなことを小春くんは叫んでいた。前と同じだ、って。 「和也くんが前の‘友達’に飽き始めていた頃、僕が彼に取り入った。『僕は今までの人と違う。束縛しないよ』って。和也くんが束縛を嫌っていて、特定の人を作らないのは知ってた。でもそれでも良かったんだ、和也くんに求めてもらえるなら」 俺は黙って聞いていた。 「でもさ、今日君が来て。君が和也くんの好みにピッタリなのは見てすぐわかった。だから取られたくないから、焦った。そしたら僕も愛想尽かされちゃった…」 店員さんが気を利かして無言でコーヒーとケーキを置いていく。小春くんは俯いて涙をポロポロ零しているため、それに気づかない。 「結局、僕も今までの人と同じになったんだ…」 俺のコーヒーは半分になった。だが小春くんの水はまだ並々と揺れている。
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