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こんなふうに涙を零す小春くんに対して、偉そうにアドバイスを言える程俺は恋愛経験が豊富じゃない。過去に女の子と何人か付き合ったことがあるが、大して続かなかった。
だけど、俺の正直な気持ちを言うのならば。
「俺は、これで良かったんじゃないかと思う」
「え?」
「和也くんとは、きっと‘友達’をやめたんだろ?」
「…うん」
小春くんから切り出したのか、和也くんから切り出したのか、それは分からないが。部屋から出てくる二人の表情を見て何となくそうだろうと察した。
「綺麗事かもしれないけど、あのまま続けたって小春くんがしんどいだけだ。正式な恋人じゃないから、いつ取られるんじゃないか、関係の終わりを告げられるんじゃないかって、心が休まらないと思う」
「…」
「それに‘友達’だから和也くんにも対象としてちゃんと見てもらえないだろ?」
拙い言葉で、俺が言える限りのことを言った。だがこんなことを言っても小春くんにとって、‘友達’を辞めることが最善の選択だったのかは分からない。それは後々小春くん自身が決めることだからだ。
「でも‘友達’を辞めるきっかけというか、けしかけてしまったのは俺だよな。余計なことをして本当に悪かった」
向かいに座る小春くんに向かって頭を下げる。彼は今、どんな表情をしているのだろうか。
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