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頭を下げてテーブルの木目を見つめる。すると頭上からフフッと笑い声が聞こえた。
「…きみ、お人好しだね」
その声に恐る恐る顔をあげる。そこには泣き笑いの小春くんがいた。
「僕に怒鳴られたのに謝ったりしてさ。変な人」
「ごめん、お節介だとはよく言われる」
「うんお節介だ。人の関係に口を挟んだりして。普段の僕なら腹を立てて耳を傾けなかったかもしれない」
やっぱそうだよな…。恥ずかしくなってコーヒーを一口飲んだ。
「でもね、今日はそのお節介に少し助けられた気がする」
「…」
「本当はずっと前からわかっていたんだ。こんな関係長くは続かないって。でも今日この日のおかげで僕は前に進めそうな気がする」
そう言い切った小春くんの目元には、まだ涙が溜まっている。だけど何処か晴々とした表情だった。
「和也くんよりいい人を捕まえるんだから」
「おう」
よかった、ひとまず大丈夫そうで。そう安心していると手が温かいものに包み込まれた。
ふと見ると、小春くんの両手に俺の右手が包み込まれていた。
「例えば…君とかね?」
沈黙が流れる。小春くんの指が俺の右手の甲をするりと撫でる。
「へ?」
俺の口からは間抜けな声しか出なかった。
「冗談だろ」
「んー、それはどうだろ?」
そう言って首をこてんと傾ける小春くん。魔性だ。男なのにこんなに可愛いとかずるい。
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