手早い兄弟

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「とりあえずこれ、僕のLINEのIDだから。登録しといて」 「え?」 「しなかったら、許さないから。じゃあね」 そう言って小春くんは席を立つ。ドアのベルがカランカランと鳴った。残されたのは俺とチーズケーキとコーヒーと、小春くんのID。 「何だったんだ…」 残りのチーズケーキを一口で食べる。それをコーヒーで流し込む。味がよく分からない。 とりあえず小春くんのアカウントを検索した。するとユニフォームを着て走っている人のアイコンが出てきた。 誰だろう? 小さな画像をまじまじと眺める。 「あ、これ…」 それは前のオリンピックで日本代表の短距離の選手だった。リレーで銀メダルを獲得し、日本中を賑わせたのは記憶に新しい。 意外だ。小春くんは陸上が好きなのかな?今度聞いてみよう。共通の趣味が見つかったようで少し嬉しかった。 お金を払って店を出る。もうすっかり外は暗い。雅樹はとっくに家に帰っているはずだ。 「おーし、急ぐぞ!」 そう言って俺は駅まで駆けて行った。
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