雅樹の葛藤

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雅樹の葛藤

「こんな遅くまでどこ行ってたんだ」 帰ったからの雅樹の第一声はこれだった。酷く不機嫌そうな顔をしてソファーから俺を睨みつける。 「大したことじゃない、映画を見に行ってたんだ」 「何の」 「あれだよ、前話したアカデミー賞の候補作。まぁまぁ面白かったよ」 「本当に?」 え?何でこんなに疑ってんの? もしかして今日学校に行ったことがバレてる? 「バレてるから」 やっぱそうですか…。 「ごめん、どうしても雅樹の応援をしたくて…」 「その気持ちは嬉しいんだけどさ、来るなって言ったよな」 「何でわかったの…」 「部員が騒いでたよ。先輩も後輩も。とびきりの美人が来たって。しかも俺の兄だって」 やっぱり、そこからバレたか。バレてしまったものは仕方がない。 「ごめんな、雅樹は身内が来て騒がれたら嫌だったんだよな。今度は目立たないように気をつけるから」 「そういうことじゃない!」 雅樹が少し大きな声で叫ぶ。思わず俺の肩がビクッとした。 「俺は…俺は、お前を見せたくないんだよ」 「え?」 「お前の存在を、俺の学校では隠しときたかったんだ」 なんで。そんなに俺の存在が恥ずかしいのか。俺はそんなに悪いことをしたか。 そこまで言われる意味が分からなくて腹が立ってきた。 「なんで俺がそこまで言われなくちゃいけないんだよ!」 「あーあー、うるさい!一緒に風呂入ったら許してやるから風呂入るぞ!」 「はぁ⁉︎」 「黙って俺の背中を流せ」 そう言って雅樹は強引に俺を風呂に連れて行った。
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