2398人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
真顔で俺を見つめる雅樹。バスルームに沈黙が流れた。
「ねぇ抱いていい?」
雅樹が俺の方へとグイッと身を乗り出す。顔が近い。
「…抱き締めるってことか?お前も疲れてるよな、全然構わないぞ!」
気まずい空気を振り払いたくてわざと明るい声で言ってみたが、雅樹は未だ真顔のままだ。
「ねぇそれ本気で言ってんの」
「へ?」
「カマトトぶるのはやめなよ、オニイチャン」
そう言って雅樹の顔がグングン近づいてくる。もしかして、もしかして…?
恥ずかしさに限界を感じて俺は目を瞑った。
すると額に柔らかい感触が降りてくる。拍子抜けして恐る恐る目蓋を持ち上げる。
「…キスされると、思った?」
目を開けると意地悪そうに笑う雅樹。俺は額を抑えて顔を真っ赤にした。
「冗談も大概にしろ!」
「あはは、ごめん」
「分かりにくいんだよお前の冗談は!」
やっぱそうだ。弟の雅樹が俺にキスだなんてするわけがない。抱くなんてもってのほかだ。
「あとお前、抱かせてとか何なんだよ」
「ん?そのままの意味。疲れたから抱きしめさせてってこと」
「ったく焦った」
「何に焦った?」
「え?」
「本当に抱かれちゃうと思った?」
そう言って雅樹は俺の腰あたりを抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!