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「俺はもう洗い終わったから、兄貴使っていいよ」
そう言って雅樹がシャワーを渡してくる。俺は時間をかけずにサッと洗った。
「俺はもう上がるけど、雅樹はまだ浸かってるのか?」
「俺はもう少し浸かる。先に出て寝てろ」
「おう」
そのまま脱衣所に出て体を拭いた。曇りガラスの向こうに見える雅樹は微動だにしない。のぼせないか心配だ。
「あまり長居するなよ。お前も今日部活だったんだから早く寝ろ」
「わかってる。おやすみ」
「おやすみ」
誰もいないリビングを通って寝室に戻る。両親は海外で働くことが多いため、家にはほとんど帰ってこない。小さい頃からそうだった。だから俺が雅樹を支えようとして頑張ってきた。でも俺も雅樹に支えられてた部分が多かったのだと思う。今だってそうだ。
水を飲んで俺は泥のように眠った。
だからバスルームから聞こえる雅樹の苦しそうで、どこか切ない呻き声に気づかなかったのだろう。
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