まさかの合同練習

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まさかの合同練習

高校生活最後の大会が近い。 周りが受験勉強に励む中、俺は後輩に混じって陸上部の練習に参加していた。推薦で大学が決まっているため陸上に専念できる。 さほど大きな大会ではないが、最後という節目を迎えて俺の全力を出し切りたかった。 だが俺は強化指定選手ということもあり、部活の練習のみでは物足りなさを感じていた。 「俺が相手じゃ不足か?」 「いえっ、決してそんなことはないんですけど…」 遊佐先輩が気を遣ったように笑う。OBとして部活によく来てくれる先輩はとてもありがたい。 長距離は確かに個人競技だ。だがライバルが一緒に走るのと走らないのでは大分気持ちが違う。このメンバーでは俺が圧倒的に速いため、精神的に追い込めない歯痒さを感じていた。 「いやいいんだ。蒼井の気持ちはわかるよ」 「…すいません」 「だからね、俺が顧問に少し話をしておいたんだ。今日にも発表されるんじゃないかな」 「え?何がですか」 「まぁ見てなって」 そう言って遊佐先輩はウインクをする。爽やかだ。 そうこうしていると本当に顧問がやって来て部員を集めた。 「えー、来週から、海明高校陸上部の長距離選手との合同練習が決まった。会場は我が校。向こうの選手には蒼井と同じく強化指定の氷室悠がいる。お互い良い刺激を与え会えるように練習に励め」 は? 氷室がうちの部活に来るってこと?
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