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「海明高校陸上部長距離班です。至らない点は多々あると思いますが、この貴重な機会を大切にして練習に励みたいと思います。どうぞよろしくお願いします」
ついに御一行様がやってきた。俺たちと向こうが向かい合って一列に整列している。恙無く挨拶をしているのはやはり氷室だ。
いつもの甘えたような言葉遣いはどこへやら、今の氷室は頼もしい先輩そのものだ。ヘラヘラした顔は封印してキリッと真面目な顔をしている。
俺の中の氷室のイメージも最初はこんな感じだったんだけど、いつから変わってしまったのか。
堅苦しい話が終わる頃、俺たち長距離は持ち場に戻り、海明高校チームがそれについてきた。
一人で歩いているとふと後ろから肩に手を置かれる。
「久しぶり」
振り向くとやはり奴だった。氷室だ。
「久しぶりったって、一週間くらい前に会ったじゃねーか。あの和也くんのイザコザを忘れたとは言わせねーぞ」
「うんごめんごめん。そのことについてなんだけど、感謝しているんだ。和也の態度もだいぶ変わったから。だからまたうちに遊びにおいでよ」
「しばらくはごめんだな。少なくとも次の大会が終わるまでは」
「はは、そうだね」
そっか。小春くんも変わったと思ったけど、和也くんも変わってくれたのか。恥ずかしい思いをした甲斐があったのかも知れない。
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