2397人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
家に帰ると丁度雅樹が風呂から上がったところだった。見事なシックスパックが眩しい。
「ただいま」
「おう」
雅樹はそのままタオルでガシガシと髪を拭きながらソファーに座った。俺も今日は疲れたのでどっしりと座り込んだ。
すると雅樹がテレビを見ながら呟いた。
「今日突然陸上部のエースみたいな先輩がうちの教室に来た」
「ほう」
「しかも目的が俺だった」
「なぜに」
スカウトか?なんて呑気に思ってた。
「兄弟がいるかってしきりに聞いてきたよ」
「は?」
「『蒼井颯人って人を探してるんだ』って。苗字が同じだから俺のところに確認しに来た」
ちょっとまて。
背筋がゾッとする。心当たりは…ない、のか?
そこで雅樹を訪ねたのが‘陸上部のエース’であることを思い出した。
まさかな…出来過ぎじゃないか。
「それってちなみに…」
「氷室悠って人」
うわああ…
やっぱり…
弟は水泳の強豪校に行くために県外の高校に通っている。どんな偶然だよ。
「それでいますって言った」
ば か も の !
たった一回の合宿で会っただけでそこまでするか?
そもそも何がしたいんだ。
俺の考えすぎだと思っていた。
この時の俺には何もわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!