まさかの合同練習

9/41

2398人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
この日もそうだった。 氷室がこちらの顔色を伺うように話しかけてくる。話しかけないという選択肢はないのか。 普段の俺ならこんなにイライラしないはずだ。だが焦りが俺の苛立ちを助長している。頭の中ではそうやって冷静に分析できても、感情は簡単にコントロールできるものではない。 「あのさ、蒼井…」 「ったく、いい加減にしろよ‼︎‼︎」 しまった。 そう思った時にはもう遅かった。 氷室も、部員も、海明高校の選手も、驚いた様子で俺を見ている。 だが一回感情が爆発すると止められなかった。 「いつもいつも何なんだよ!俺がお前の走りを見て焦ってるのが分からないのか⁉︎」 「いや、蒼井…」 「俺は今度こそお前に負けたくないんだよ!ここが正念場なんだよ!それともなんだ、お前にとって俺はライバルでもなんでもないってか?眼中にないのか?」 「そんなことない!俺は…」 そう言って氷室は押し黙ってしまった。トラックに痛々しい沈黙が流れる。 俺が招いた事態なのに、その空気が酷く辛かった。 言いすぎた。 そんなことは分かっているが止められなかった。傍目から見て状況的に完全に俺が悪い。勝手に怒鳴り散らしたんだから。 「…悪い。今日はもう…帰る」 耐えられなくなって、走って更衣室に戻る。 追いかけてくる人は、当然、いない。 どうしちまったんだ、俺。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2398人が本棚に入れています
本棚に追加