2397人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
「お前、名前だけしか教えてないだろうな…」
すると雅樹は少し考えるような仕草をした。
「兄貴の学校も流れで教えたかも」
こういうやつだと思いましたよ。やっぱりね。個人情報ダダ漏れじゃないか。
「ちょっと俺そいつ苦手でさ。あまり俺のこと話さないでくれると嬉しいんだけど」
「兄貴がそんなこと言うの珍しいな」
「合宿で会ったんだけどその時からさ」
「…なんかされた?」
思わずギクっとした。雅樹は少し心配性なところがあるから。昔俺関係でイザコザがあった時も過剰に介入してきた。
「心配してんだよ。兄貴は天然で無自覚だから」
「無自覚って何が」
「そういうとこだよ」
そのまま雅樹に髪をくしゃくしゃと撫でられた。
「やめろって、まだ風呂入ってないから汚い」
撫でる手を振り払って風呂場へ向かった。
熱い湯を頭からかぶると髪の根本が解れるような感じがした。鏡にシャワーをかけると裸の俺が映る。
生白くて細い体。外部活なのに体質から焼けない。夏に褐色に焼けるチームメイトがいつも羨ましい。唯一気に入っているのはクセのないこげ茶の髪。この髪色で染めてるのか何度も聞かれた。
でも本当は短髪にしたいけど毛が細いから似合わない気がする…。
風呂から上がると雅樹はもういない。
今日の走り込みの疲れがどっと出てベッドに倒れ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!