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「焦れば焦るほど空回りしちゃって、感情もコントロールできないし、みんな離れていくし…。なんか、全然上手くいかないです。陸上も人間関係も」
あ、やばい。
目が熱くなってきた。
先輩の前で泣くとか、絶対に嫌なのに。
止めようとするほど目は余計に潤んでくる。耐えきれなくなった滴が俺の腕に静かに落ちた。
もう、顔は上げられない。
遊佐先輩は俺が泣いていることに気づいているだろう。でも何も言わなかった。
何も言わないでくれた。
ただ俺の背中を摩ってくれている。優しく、あやすように。
その優しさに涙が余計に溢れてきた。
遊佐先輩が何か言ってくれたのだろう。
練習再開の時間になっても、誰も俺を呼ばなかったし探さなかった。
木陰の中で、遊佐先輩の隣で、俺はひとしきり泣いた。声を殺して、泣いた。
最後の大会へのプレッシャーとか、氷室関係で戸惑う感情とか、その他諸々が溢れてきた。
遊佐先輩はそれを黙って受け止めていた。
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