まさかの合同練習

18/41

2398人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
遊佐side 蒼井の調子が戻ってきた。それはとても嬉しいことだ。 蒼井はうちの部でダントツに速いし、憧れている後輩も多い。だから蒼井がベストタイムを出したとき、部に活気が戻ってきた。 この前相談に乗ったのが蒼井にとって良かったのか、蒼井はあれから俺によく懐くようになった。 何か嬉しいことがあると「遊佐先輩、遊佐先輩!」と駆け寄ってきたり、落ち込んでも「遊佐先輩…」と静かに寄ってくる。 蒼井はかなり綺麗な顔立ちをしているため、すり寄ってくる姿は子猫のようでとても可愛らしい。 自慢の後輩だから俺も蒼井を気にかけていたので、割と嬉しい。 休み時間にいつものようにベンチに腰をかけていると、背後から気配を感じた。 その不気味さにゾッとして振り返る。 そこには氷室がいた。 「…どうしたの、氷室くん」 「仲良いんですね、蒼井と」 逆光になってて氷室の表情はよく分からない。だが口元が笑っているのだけは分かった。 「うん自慢の後輩だよ。あまりあの子を困らせないでやってくれ」 俺らしくもなく、少し嫌味な口調になってしまった。だが氷室は依然として笑っている。 「意図的にやってるんです。…遊佐さんは、邪魔しないでください」 その言葉にはハッキリとした敵意が込められていた。 …やはり、氷室と蒼井の間には何かがあるのか。 そう思った時には氷室は俺に背を向けて立ち去っていた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2398人が本棚に入れています
本棚に追加