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蒼井side
氷室と話せないのは少しモヤモヤする。変な奴だけど、いい奴だし才能はあるし陸上の話をもっとしたい。
俺から怒鳴ってしまったけど、陸上に関係ない無駄な絡みを止めろと言っただけで、こうやって避けられるのは悲しかった。
俺のこと、もう嫌いになっちゃったのかな。
寂しくて、その寂しさを埋めるように気がつくとまた遊佐先輩に話しかけていた。
「遊佐先輩、今日の俺の走りどうでしたか?」
「後半になっても足のバネが力強くてとても良かったよ。いい感じだ」
「ありがとうございます!」
そう言うと遊佐先輩が俺の頭を優しく撫でてくれる。心地良くて思わず俺は目を細めた。
すると背中に何かがぶつかる衝撃を感じた。
「痛っ」
「…ごめん」
振り返ると氷のように冷ややかな目をした氷室が立っていた。
「前見てなかった」
「…そっか」
久しぶりの、氷室との会話だ。こんなたわいのないことでも。
氷室が目線を遊佐先輩の方に向ける。
「前も言いましたけど、随分仲良いんですね。蒼井とどういう関係ですか」
はぁ?いきなり何言ってんだこいつ。
「どういう関係もなにも、先輩と後…」
「付き合ってるよ」
は?
俺の声を遮って遊佐先輩が言った。
氷室も驚きで目を見開いている。
俺も困惑して遊佐先輩を見上げた。
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