まさかの合同練習

23/41

2398人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
氷室は一切と言っていいほど俺に関わらなくなった。俺のそばにはいつも遊佐先輩がいるようになったからだ。 今日も先輩が俺のためにドリンクを持ってきてくれる。そこまでしてもらって申し訳ないと言うと、氷室に怪しまれないためだと言われる。 部活が終わってもそれは変わらなかった。 着替え終わって汗臭い部室を出ると外で遊佐先輩が待ってた。 俺の姿を確認すると、爽やかにニッコリと微笑みかけてくる。 「おつかれ」 「お疲れ様です。どうしたんですか?」 「どうしたも何も颯人を待ってたんだよ。帰り何か食べて帰らないか?」 「え、でも雅樹が家に…」 「雅樹くんにはもう言っといたから。今晩お兄さんを借りるねって」 そう言うと遊佐先輩は腕を俺の腰に回した。 まるで本当の恋人のようなエスコートにドキドキする。 なんか、でも遊佐先輩だと様になってるな。 恥ずかしげもなく自然にこの体勢に持ち込んだし、女性をエスコートするのに慣れているのだろうか。 「なんか先輩手馴れてますね」 揶揄うように先輩に言う。そうすると遊佐先輩は困ったように笑った。 「家でパーティーを開くことが多いんだよね。そうじゃなくても他家から招待されたり。その度にホストとして、ゲストとして色んな人に挨拶しなきゃいけないんだ」 「あ、そういえば遊佐先輩の家って…」 「歴史はあるけどめんどくさい家だよ。まあそのパーティーの関係で女性をエスコートすることはよくあるんだ」 それは、遊佐先輩が次期当主だからなんだろう。 だから今のうちに色んな人とコネクションを持つ必要がある。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2398人が本棚に入れています
本棚に追加