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氷室は一切と言っていいほど俺に関わらなくなった。俺のそばにはいつも遊佐先輩がいるようになったからだ。
今日も先輩が俺のためにドリンクを持ってきてくれる。そこまでしてもらって申し訳ないと言うと、氷室に怪しまれないためだと言われる。
部活が終わってもそれは変わらなかった。
着替え終わって汗臭い部室を出ると外で遊佐先輩が待ってた。
俺の姿を確認すると、爽やかにニッコリと微笑みかけてくる。
「おつかれ」
「お疲れ様です。どうしたんですか?」
「どうしたも何も颯人を待ってたんだよ。帰り何か食べて帰らないか?」
「え、でも雅樹が家に…」
「雅樹くんにはもう言っといたから。今晩お兄さんを借りるねって」
そう言うと遊佐先輩は腕を俺の腰に回した。
まるで本当の恋人のようなエスコートにドキドキする。
なんか、でも遊佐先輩だと様になってるな。
恥ずかしげもなく自然にこの体勢に持ち込んだし、女性をエスコートするのに慣れているのだろうか。
「なんか先輩手馴れてますね」
揶揄うように先輩に言う。そうすると遊佐先輩は困ったように笑った。
「家でパーティーを開くことが多いんだよね。そうじゃなくても他家から招待されたり。その度にホストとして、ゲストとして色んな人に挨拶しなきゃいけないんだ」
「あ、そういえば遊佐先輩の家って…」
「歴史はあるけどめんどくさい家だよ。まあそのパーティーの関係で女性をエスコートすることはよくあるんだ」
それは、遊佐先輩が次期当主だからなんだろう。
だから今のうちに色んな人とコネクションを持つ必要がある。
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