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「あー、後輩にこんなみっともない姿見せたくなかったんだけどな」
遊佐先輩が俺を離して開き直ったように笑う。少し無理をしているように見えたが、俺はひとまず笑ってくれたことに安心した。
「誰だってそう言う時ありますよ」
「そうだよね。蒼井もあの時かなり落ち込んでたみたいだし?」
あの時、が遊佐先輩の横で泣いた時のことを指してると分かり俺も恥ずかしくなる。
「そ、そうですよ。誰だって落ち込むことはあるんです!」
俺がそう言うと先輩はクスクスと笑う。
「そうか。今回は俺が蒼井に励まされちゃったな」
そう言って遊佐先輩は歩き出す。俺も慌ててそれについて行った。
「まーでも、家を任されるのは実際辛いことばかりじゃないからさ。…多分ね」
「その時はまた俺に愚痴ってくださいよ」
「それは多分もうないから」
「えー」
たわいもない会話が楽しかった。
その後、遊佐先輩が駅前の少し高いファミレスを奢ってくれた。先輩に奢ってもらう手前、遠慮してそんなにたくさんは食べなかったが、コーヒーをちびちび飲んで長居した。
長居して、色んなことを話した。
とても楽しかったのだが、ふとした瞬間、氷室が脳裏によぎっていた。
それが罪悪感から来るものなのか、はたまた他の感情から来るものなのか、俺には分からなかった。
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