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「そっか、そうだよね。せっかくの合同練習に私情を挟んで本当に申し訳ない…」
俺が頭を下げると海明高校の選手が必死にそれを止めた。
「やっ、やめて下さい頭を下げるなんて!」
「いやでも申し訳なくて…」
「蒼井さんが俺らに頭を下げる姿なんて見られたら、俺たちが大変なことになりますから!」
「え?」
「こっ、ここだけの話なんですけど、氷室先輩からキツく釘を刺されているんです」
他の海明高校の選手もブンブンと首を縦に振る。
「蒼井さんに変なことしたら、容赦しないって」
その一言に俺は呆然とした。みんな気まずそうな顔をしているから本当なのだろうが…。
「誤解しないで欲しいんですけど、普段は氷室先輩こんなこと言う人じゃないんですよ。いつもは優しくてカッコいい先輩です」
「じゃあどうして…」
「俺たちも最初は正直理由がよく分からなかったんです。なんでそんなこと言うんだろうって。でも、蒼井さんを見て納得というか…」
すると他の選手もうんうんと頷く。
え、わかってないの俺だけ?
「蒼井さん、だってすっごい…いや、何でもないです。これ以上言うと命が危ない」
「?」
「とにかく、こうして話している間にも気づきませんか?」
「何に?」
「氷室先輩の鋭すぎる視線」
海明高校の選手が目線で合図する方を見ると、その先にはこちらを見つめる氷室がいた。
俺と目があったのに気付いて直ぐに目線を逸らされてしまったが。
確かに氷室はこちらを見ていた。
偶然の一瞬かもしれないが、その一瞬に俺は無性にドキドキしてしまった。
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