まさかの合同練習

28/41

2399人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
「そっか、そうだよね。せっかくの合同練習に私情を挟んで本当に申し訳ない…」 俺が頭を下げると海明高校の選手が必死にそれを止めた。 「やっ、やめて下さい頭を下げるなんて!」 「いやでも申し訳なくて…」 「蒼井さんが俺らに頭を下げる姿なんて見られたら、俺たちが大変なことになりますから!」 「え?」 「こっ、ここだけの話なんですけど、氷室先輩からキツく釘を刺されているんです」 他の海明高校の選手もブンブンと首を縦に振る。 「蒼井さんに変なことしたら、容赦しないって」 その一言に俺は呆然とした。みんな気まずそうな顔をしているから本当なのだろうが…。 「誤解しないで欲しいんですけど、普段は氷室先輩こんなこと言う人じゃないんですよ。いつもは優しくてカッコいい先輩です」 「じゃあどうして…」 「俺たちも最初は正直理由がよく分からなかったんです。なんでそんなこと言うんだろうって。でも、蒼井さんを見て納得というか…」 すると他の選手もうんうんと頷く。 え、わかってないの俺だけ? 「蒼井さん、だってすっごい…いや、何でもないです。これ以上言うと命が危ない」 「?」 「とにかく、こうして話している間にも気づきませんか?」 「何に?」 「氷室先輩の鋭すぎる視線」 海明高校の選手が目線で合図する方を見ると、その先にはこちらを見つめる氷室がいた。 俺と目があったのに気付いて直ぐに目線を逸らされてしまったが。 確かに氷室はこちらを見ていた。 偶然の一瞬かもしれないが、その一瞬に俺は無性にドキドキしてしまった。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2399人が本棚に入れています
本棚に追加