2399人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
「あんな氷室先輩は初めてですよ…」
「触らぬ神に祟りなしってな」
「という訳で練習の片付けも終わったみたいですし、俺たちは帰りの準備しますね」
そう言うと海明高校の選手は一目散に散ってしまった。
残されたのは俺と数人の後輩。
後輩の一人が俺に向かってニヤリと笑った。
「モテる男も辛いですね」
「なっ、モテてないし!」
俺が咄嗟に返しても後輩達はニヤニヤしていた。
「ほら、もう帰れ!最近は日が短いから危ないぞ」
「はーい」
後輩と一緒に部室に行って着替える。
きっと今日も外で遊佐先輩が待っている。そう思って荷物を急いで詰めた。
ドアを開けるとすっかり日が沈み、辺りは真っ暗だった。今日は少し練習が長引いてしまったからな。
すると向こうに部室棟にもたれかかるような人影が見えた。
闇に目が慣れていないため誰かはよく分からないがいつもあの辺りで待ってるし、きっと遊佐先輩だろう。
待たせてしまったことが申し訳なくて、慌てて人影に駆け寄る。
「すいません、少し遅くなってしまって!」
俺がそう言うと人影は俺の方を向いて俺の腕をガシリと掴んだ。
かなり強く掴まれていて痛い。
「っ、痛いです、遊佐先輩」
俺の声を聞きもしないで人影はズンズンと俺を引っ張って校舎へ入って行く。
流石におかしいと思って振り払おうとしたが、力が強くて無理だった。
「こ、校門とは逆なんですけど!どこに行くんですか!」
顔の見えない人影に恐怖が募っていく。
これは、遊佐先輩じゃない。
誰だ。
誰なんだこいつは。
そいつがようやく止まったのは、旧校舎の空き教室だった。
最初のコメントを投稿しよう!