まさかの合同練習

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もう使用されていない旧校舎なんて漫画みたいなものが、うちの学校にはある。 来年には取り壊されるという噂だが、俺はほとんど入ったことがなかった。 ホコリが積もる薄暗い廊下に恐怖が増す。 「っ、いい加減にしろよ!」 暴れても無駄だった。空き教室にズルズルと引き込まれる。 人影は扉を閉めて俺を机の上に押し倒した。 その衝撃で背中が痛む。 そのまま人影は俺の上にのしかかってきた。 俺の両手は机の上に縫い止められている。 「やめろ、何なんだよ」 人影は何も言わない。 すると雲から月が出て、光が漏れた。 「何とか言えよ、氷室‼︎」 照らされたその顔は、やはり氷室だった。 途中から薄々気づいていた。 だが今ので確信が持てた。 氷室の顔は恐ろしい程に「無」だった。何の感情も浮かんでいない。 氷室はそのまま俺の首筋に顔を寄せた。 くすぐったくて身をよじると、それを咎めるように首筋を甘噛みされる。 突然の感触に思わず変な声が出た。 「悪い子だね、蒼井は」 ようやくポツリと漏らした氷室の声はやけに静かだった。
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