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遊佐side
部活が終わったあと、顧問に少し呼び止められた。蒼井の調子を聞かれたのだ。
いい感じですよ、と答えると顧問はどこか安心したような顔をする。
やっぱいろんな人から愛されてるな、蒼井は。
あの綺麗な顔から想像できないほど男前な一面がある蒼井。初めてその内面を見た人は少し面食らうけど、直ぐにそのギャップに魅了される。
俺もそのうちの一人だった。
顧問と話していると少し遅くなってしまった。部室棟の外のいつものところで蒼井が待っているかもしれない。
もうこんなに暗いし、疲れているだろうから早く迎えに行ってやらなくちゃ。
こんな風に考えることが、本当の恋人になったようで少し楽しかった。
だが荷物をまとめて部室棟に駆け寄っても、そこに蒼井の姿はなかった。
…先に帰った?
いや、今まで俺の方が遅いことがあっても蒼井は俺を待っていた。
何も言わずに帰るとは考えにくい。
茫然と立ち尽くしていると、後ろから部員に話しかけられた。
「あれ、遊佐先輩なんでこんなところにいるんですか?」
「え?」
「さっきここで蒼井先輩を待ってて、そのまま蒼井先輩と帰っていたのを見た気がしたんですけど…」
「…それ俺じゃない」
「え?じゃああの人誰だったんだろう?」
「蒼井は校門から出たか?」
すると部員は校門のそばで人を待っていた友人に呼びかける。
「おーい!蒼井先輩って校門通ったか?」
「いや、蒼井先輩はまだ出てないと思うぞ!」
蒼井は、まだ校内にいる。
どこだ。誰だ。
誰が蒼井をどこへ連れて行ったんだ。
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