まさかの合同練習

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「とにかくもう遅いから帰ろう。雅樹くんも心配してる」 遊佐先輩が俺にスマホを見るように促す。見ると雅樹から沢山の通知が来ていた。 『今日は遅くなるのか?晩ご飯作っとこうか?』 『大丈夫か、何かあった?』 『おい、既読してくれ』 雅樹の必死そうな表情が浮かぶ。 「雅樹に申し訳ないな。…すいません、帰りましょう」 俺がそう言うと遊佐先輩は黙って俺の肩を抱いた。そのまま歩き出す。 遊佐先輩の支えがなければ俺は今にも倒れてしまいそうだった。 出口の無い真っ暗な廊下がどこまでも続いている気がする。気を抜くと足が床に沈みそうになる。 立ち止まってしまいたくなる。 氷室はまだ一人で教室にいるのだろう。 あいつはいつまであそこにいるのだろうか。 真っ暗な古びた教室に、いつまで囚われるのだろうか。 あんなに辛そうな顔をしているのに、どうして俺を想い続けるんだろう。どうして俺なんだろう。 そして俺はあいつにどう応えたらいいんだろうか。 分からないことだらけだった。 すると遊佐先輩が俺の頭をゆっくり撫でた。 「…ゆっくりでいいんだよ。時間はいくらでもあるから」 その言葉にハッとして先輩を見上げる。 遊佐先輩は真っ直ぐ前を見つめていた。 まるで俺の気持ちがわかっているかのような口ぶりに驚いた。 だが妙な納得してしまい、俺は黙ったままでいた。 旧校舎を出て校門の前に立つ。 俺はゆっくりと旧校舎の方を見た。 この旧校舎がまだ、氷室を包んでいる。 あいつはたった一人で月を眺めている。 それはやけに寒々しい月だった。
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