三人の夜

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雅樹side 兄貴の気が明らかに抜けている。 兄貴の一番近くにいる俺だからそれがよくわかる。毎日練習は頑張ってるみたいだけど、気持ちが入ってないのは明らかだ。 経験上、この様子だといい結果は出ない。 俺と兄貴では種目こそ違うものの、そこに間違いはないだろう。 いくら練習して鍛えても、1日1日を意識して気持ちを入れないと成果は出ないものだ。 俺は家族として兄貴の努力を一番近くで見てきた。 こいつがどれだけ苦労して今の力を手に入れたかも知っている。 実は俺も兄貴の影響で昔少し陸上をやっていた。しかし直向きに陸上に打ち込む兄貴を見て、勝てないと思った。 だから競泳にした。 才能もあるけど、人よりずっと努力もしている。 だから最後の大会は良い結果を出して終わって欲しかった。 心からそう思っている。 けどこの様子では…。 本当は兄貴だってわかっているはずなんだ。 今のままではいけないと。 何とかしてやりたいのは山々だが、原因となるものが分からなかった。 だからせめてもと、俺は甲斐甲斐しく兄貴に尽くしている。 さっきも兄貴を引っ張って風呂場まで連れて行った。 大会まであと3日だというのに大丈夫か…。 ため息をつきながらスマホを見る。するとラインに通知が来ているのに気がついた。 誰だ? 確認すると遊佐さんからだった。 俺に連絡してくるなんて珍しい。 不思議に思ってトークを開いた。
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