2398人が本棚に入れています
本棚に追加
颯人side
風呂から上がると雅樹がソファーに座ってスマホを見ていた。いつものスマホゲームかと思ったが、その表情がやけに険しい気がした。
「どうかしたのか」
頭をフェイスタオルでガサツに拭きながら尋ねると雅樹がこちらを見る。
「いや…なんでもない。それより早く寝ろよ、明日も朝練なんだろ」
「うん」
弟なのに俺よりしっかりしてる。皿はとっくに洗い終わり、洗濯物は綺麗に畳まれていた。
いつの間にこんなに頼もしくなっちゃったんだか。その優しさに嬉しくなりつつも寂しくもあった。
雅樹に促されて俺は寝室に向かう。
ベッドに寝転ぶと疲労感で体が沈む。その心地よさに目を閉じてそのまま眠りに落ちてしまいたくなった。
だがそこでラインに通知が来ていることに気がついた。
放っておくとなんとなくモヤモヤするので眠い目を擦ってラインを開く。
眩しさに目を細めつつ相手を確認した。
それは氷室だった。
『明日の夜8時から、時間ある?』
その言葉にどきっとした。
明らかに部活の後を意識した時間帯だった。
…どうしよう。
何を話すのだろうか。あの日のことか。
そう思うと怖くなったが、一歩踏み出すには今しかない気がした。
相談しようにも流石に遊佐先輩にはもう迷惑はかけたくないし、雅樹にはこのことを話してないし…。
その場で返事をすることができず、悶々としたまま俺は眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!