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なんだかよく眠れないまま気がつくと朝になっていた。微睡ながら目覚ましを止め、階段を降りると仄かに味噌汁の匂いがしてくる。
「おはよう」
丁度、キッチンで雅樹が朝食の準備をしているところだった。
テーブルには既に味噌汁とご飯、ベーコン付き目玉焼きとサラダが並んでいる。
「…ありがとう」
雅樹が優しすぎて、気がつくと涙が溢れていた。
そんな俺の姿を見て雅樹が少しギョッとしたような顔をする。
「おいおい、なんで泣いてんだよ。早く顔洗って来い」
「だって、雅樹が優しくて…その、ごめん」
だめだ。
最近悩み事が多くて、優しくされると簡単に泣けてくる。雅樹もそれがわかっているのか何も言わずにハンカチで俺の涙を拭いた。
「あのさ…なんかあった?」
雅樹が静かに尋ねる。
言葉は疑問形なのに、口調はどこか確信しているような聞き方だった。
「実は…」
俺は雅樹に大筋を話した。
氷室の俺への想いと、旧校舎での出来事を伏せて話した。
一見ライバルと喧嘩しているように聞こえるはずだが、どうだろうか。
ついでに今日会いたいと言われていることも話す。
一通り話して黙り込むと雅樹が言葉を発した。
「今日、会うべきだ」
雅樹は真剣な表情で俺を見つめている。
その雰囲気に圧倒されて俺も頷いた。
「…だよな」
「けど場所はうちにしろ」
「え?」
「この家に氷室先輩を呼んで。俺も立ち会うから」
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