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「ただいま」
家に帰ると雅樹がシャワーから上がったところだった。目線で俺にも入れと訴えてくる。
氷室にはこの家の地図を送っといた。
わざわざ来てもらうのだから俺が駅まで迎えに行くと言ったら
「いいだろ別に、駅から近いんだし」
と雅樹に止められた。
なんだか雅樹が氷室に対してそっけない気がするが、どうかしたのだろうか。仮にも高校の先輩なのに。
そんなことを考えながら汗をシャワーで洗い流し、いつもよりはしっかりした部屋着に着替える。雅樹もすっかり着替え終わってテーブルの前に座りながらスマホをいじっていた。
「あのさ、雅樹はあれ以来氷室との接触はあるの?」
「あれ以来って?」
「ほら、なんか氷室がわざわざお前の教室まで来て俺のことを聞きに来たやつ」
「そんなこともあったな。…まあしいて言うならあれ以来廊下ですれ違うと軽く声をかけられるようになった」
「なんて?」
「おにいさんは元気か?って。そればかりだ。俺自身に関して話しかけられることはないよ」
「そっか…」
相槌を打って黙り込んでいると雅樹から視線を感じたが無視した。目を合わせると感情を読み取られそうな気がして怖かったのだ。
そのままテーブルに突っ伏して目を閉じる。このままもう動きたくなかった。
緊張しているのだろうか。
いや間違い無いな、緊張してる。
しばらくじっとしていると突然インターホンが鳴った。
身体がビクッと跳ねる。
「俺が出ようか」
そんな俺の様子を見てか、雅樹がそう申し出た。
「…いや、俺が出る」
俺が行かなきゃダメなんだ。
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