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氷室は今隣にいる。
氷室を突き放したいけど、氷室は俺から離れようとしない。
ほんとうに、あともう少しなのに。
でも氷室だって同じことを思っているはずだ。
こんなラストスパートだというのに疲労を全く感じない。
どこまでも駆け抜けていけるような気持ちになる。
脳からアドレナリンがドバドバ出ているのがわかる。
つまり筋肉と疲労のリミッターが外れている。
きっとゴールした後、俺の身体は酷い状態になっているだろう。
だがそれでもいいと思った。
こんなに全力を出せることは、今までも、これからも、もう無いかもしれない。
あともう少し力を出せていれば、なんて後悔をするくらいなら身体がぶっ壊れた方がマシだ。
なあお前もそうだろ。
気持ちいいな。
このままお前とどこまでも駆けてしまいたい。
世界の果てまでも。
その先にはどんな景色が見えるのだろうか。
ゴールはもう目の前にある。
前だけを見つめた。
そして俺たちは、ほぼ同時にゴールテープを切った。
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