その種、頂戴します。特別番外編2(※前編)

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 妊娠検査薬の陽性は、確実な「正常妊娠」を示すとは言い切れないからだ。  正常妊娠以外で検査薬が陽性となる場合もあり、子宮外妊娠などが例に挙がる。一番正確なのは病院を受診し、医師による問診と超音波検査などの結果だ。そこから総合的に診断するというわけだ。 (……妊娠か)  誉は妊娠出産についての知識を次々と脳内で巡らせた。  オメガ男性の妊娠出産は、医療技術が進歩した今でも解明されていない部分が多く、身体への負担も大きいとされる。  膣がない彼等にとって、経膣分娩はもちろん不可能だ。では何処から産むのか……答えはひとつ。後孔が膣の役割を果たすのだ。そこが一番、リスクが高いとされる点だった。  彼等の体内にはもともと産道は存在しているが女性とは作りが違う。頸管も少し短めな事から、切迫早産の可能性も高い。その為、自然分娩よりも帝王切開での出産となる場合が殆どだった。母子共の命を最優先とする為だ。 (とにかく……正式な検査だ)  あれこれ考えても話はそれからだ。藪中への報告はすべてハッキリしてからがいいだろうと、誉は内線電話をプッシュした。この春に新設された、産婦人科三種合同研究室にコールしたのだ。  婦人病や女性ホルモンについての研究を進めるチームで、そこには産婦人科医も所属している。理生研で働く女性研究員がいつでも安心して妊娠・出産が出来るようにと、宮本センター長の提案で設けられた研究室だった。さすがに分娩までは行わないが、妊娠後期までの検診が受けられるというわけだ。
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