その種、頂戴します。特別番外編2(※前編)

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「でもね、ちょっと独占欲が強いんですよね。心配性だし……」  お腹の中の生命に向けて、ふふっと笑った。 「もし……貴方が可愛い女の子なら、お父さんの心配が少し増えますね」  まだ性別すらわからないのに、将来を想像してみた。出産への不安、順序がどうとか、今は考えずに、家族三人で暮らす未来を脳内で描いた。それだけで誉の胸はあたたかさでいっぱいになった。  ああ、早く伝えたいのに、どうして――。 「どうして、遅いんですか……路成さん」  この気持ちを今すぐにでも共有したいと、寂しさを滲ませた声色で番を呼ぶ。すると――。 「……ただいま、誉さん」 「っ――!?」  ぶわっと、心地よい香りが舞うと同時に、背もたれ越しに抱き締められた。逞しくて大きな腕が誉の肩を包んだ。 「さっきから何を一人で話していたんです?」  この魅力的な男の声は……彼だ。 「藪中さん! い、いつの間に……っ!」  慌てふためきながら背後に視線を送る。そこには満面の笑みの藪中がいた。  待ち焦がれた番だった。しかし、全く気付かなかった。物音どころか足音すら聞こえなかった。お腹に話し掛ける事に集中し過ぎたのかもしれない。 「あれ? さっき、寂しそうに路成さんって呼んでませんでしたか?」  藪中はそう言って抱擁を解くと誉の隣に腰掛けた。指先でネクタイを緩める仕草も、そこから覗く大きな喉仏も男らしい。何をしても惚れ惚れする。誉からすると、この運命の番は、極上すぎる男なのだ。 「よ、呼んでません! 貴方を名前で呼ぶのは、その……特別な時だけですから……!」  照れを隠すようにして否定した。 「特別? それはベッドの中って事?」 「そうです……って、ちょっと、何を言わせるんですかっ!?」  しかし、逆効果だったようだ。上手いこと乗せられてしまったと、誉は眼鏡の奥で瞳を吊り上げた。
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