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「あはは、顔が真っ赤だ。貴方は本当に、可愛い番だ……」
爽やかに笑われて顔を覗き込まれた。二人の鼻先が触れ合った。
「っ、そうやってまた……年上を揶揄って……っんぅ、っ」
抗議しようとした声は塞がれた。藪中が大きく食む動きで口付けてきたからだ。合わさった唇から甘い熱が瞬時に伝わる。それを合図に、誉の身体は強く抱き寄せられ、唇は更に深く繋がった。
「……誉さん、遅くなってすみませんでした。明日は入籍だっていうのに……」
ここで一旦、口付けが解かれると、藪中が遅い帰宅に詫びを入れてきた。
「んっ……いえ、気にしないでください。それより、大丈夫でしたか?」
吐息が重なる距離で尋ねた。
「はい、もう解決しました」
額同士をコツンと合わせた藪中が髪を優しく撫でてきた。指間から艶やかな黒髪が滑っていく。
「よかったです。身体だけには気を付けて下さいね……来週は北海道でしょう?」
その感触に安心感を覚えながら、誉は藪中の両肩に手を置いた。
「本当は行きたくないですけどね……髪、少し濡れてますね。ちゃんと乾かさないと……せっかくの綺麗な髪が傷んでしまう」
次は耳元から掻き撫でられた。大きな掌が薄い耳朶を擽った。
「んっ……あ、さっきシャワーを浴びたところですから……」
こそばゆいと、誉はピクンと背を反った。そんな反応すら可愛いと思っているのだろう。藪中は口元を綻ばせて言った。
「ご飯は食べました?」
「いえ、食欲が無くて……」
「え? 調子でも悪いのですか?」
顔色を変えた藪中が額をパッと離した。
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