バニシングツイン

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バニシングツイン

「あんたもね、本当は双子だったのよ」  ヒサトの母親が突然そう言いだしたのは、夕飯の後、リビングでテレビを見ているときだった。その番組には双子のタレントが出ていて、双子ならではのエピソードを披露して笑いをとっていた。 「は?」  ヒサトが発したのは、その一言だけ。ヒサトは生まれたときから一人っ子だ。困惑したのはオレも同じだった。  ぽかんとして会話が続かない息子のために、母親は立ち上がって母子手帳を取ってきた。彼女がその中から抜き出したのは、一枚の小さな紙切れ。ヒサトが後で調べたところによると、妊婦の子宮を超音波で撮影した、エコー写真というものらしい。  それを見せられても、ヒサトもオレも、いまいちピンとこなかった。見慣れない白黒の画像のどこに注目すればいいか分からなかったのだ。 「ほら、米粒みたいなのが二つあるでしょ?その一つがあんたよ。それでもう一つの方が、あんたと双子だったはずのもう一人」 「だったはずって……?」 「次に健診に行ったらね、いなくなってたの。もう一人の方。お母さんも驚いたけど、よくあるんだって」 「死んだってこと?」 「よく分からないらしいわ。死んじゃったとか、もう一人の方に吸収されたとか、諸説あるみたい」  ヒサトの体に、ぞっと鳥肌が立った。  その目がもう一度、エコー写真の二つの白い点をじっと見つめた。  ヒサトも直感したはずだ。  それはこの世でたった一枚だけ存在する、「オレ」の写真だってことを。
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