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「はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」
カウンター席に座るように促されて、待つこと数分。
彼はお皿に乗ったミルフィーユを持って奥から出てきた。
「前に食べたときに、すっごく美味しくて。この、口の中に入れた瞬間にとろける感じが最高で!」
ひとくち口に含んでから、あたしは興奮気味に言う。
「これ、俺が作ったんだよ。直接言って貰えるとやっぱり最高だね」
すこし照れたような顔でにっこりと笑う。
こんな感想だって、あたしが感じたことじゃない。
別の人が感じたことだ。
「このミルフィーユ開発してたときに何度も何度も試食した」って。
「よかったらまた食べに来てよ」
「.......はい」
「.......連絡先聞いてもいいかな?」
「え?」
連絡先を聞かれる準備なんてしていなかった。
あたしは彼を求めてやってきたけど、彼となにか関係を求めているわけじゃない。
でも、彼の表情があまりに真っ赤で気がついたらメッセージアプリを開いていた。
「正直、俺.......君に一目惚れなんだと思う」
「.......え」
「知り合ったばかりだし、すぐに付き合えとか言わないから!だからたまにご飯行ったりしてくれたら嬉しい。ここ、俺の店だから来てくれれば話せるし」
「わかりました」
必死に伝えようとしてくれているのが嬉しくて、そんなつもりは全くなかったのについ返事をしてしまっていた。
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