深夜、やってきたもの

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「なに……?」  突如聞こえてきた音に菜々緒は寝そべったまま目を開ける。  下の階から聞こえてきたのは軽い音だった。  プラスチック製のコップが落ちたような、二、三度地面を弾んでから、カラカラと音を奏でて転がる。そんな音だった。 「誰か起きてるの?」  父親が起きていて、何かの拍子にコップを落としてしまった。  深夜遅くまで起きていて、会社に行っている間の時間を取り戻すかのようにテレビゲームをしている父親なら可能性はあり得た。  だが……と、菜々緒は壁にかかった時計を見据える。 「明日は父さんも早いって言っていたもんね……」  自分と同じく朝早くからの仕事に仏頂面を浮かべていた父親が、寝る間を惜しんでまでゲームをするかと言われれば、可能性はあるにはある。  しかし、今回ばかりはないだろう。  父親が起きてゲームをしているのであれば、おそらく何らかの音が聞こえてきているはずなのだ。  それが聞こえてきていないということは、父親は起きていないのだろう。
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