深夜、やってきたもの

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「母さん……は、あり得ないよね」  毎朝、手作りの弁当を拵えてくれる自慢の母だが、彼女の弁当作りの手際はかなりのものである。  『だいたい、十分あればできるよ~』とは、母親の言葉だ。  冷凍食品をふんだんに使った弁当は、彼女の言う通りものの数分で用意できるし、手の込んだ料理があっても昨日の残り物くらいなものである。  そんな母親が、今日に限って深夜から起きて料理などするだろうか。 「いつものように、結構ぎりぎりに起きてくるだろうし」  朝のキッチンに、アニメや漫画に出てきそうな爆発頭みたいな寝ぐせを作って立っている母親、という構図は毎日の光景なのだ。  おそらく、今日の朝もそれが拝めることだろう。  それに料理をしているのなら、先ほどと同じく何かしらの音か、もしくは香りがするはずなのだ。  つまり、不可解な音の正体は母親でもないのだ。 「あとは――」  と、自分の家族構成を思い返そうとした瞬間、  ――ガチャンッ!! ギギィ……。  リビングの扉が開く音が聞こえてきた。
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