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扉が開いた。
間違いなく誰かが起きている。いや、いる……。
「……っ!?」
思わず菜々緒は布団を頭まで被った。
そして、寝起きで大して働きもしない頭をフル稼働して考える。
何かが家の中にいるのか。何か不可解な力が発動でもしているのか。
そんな妄想をしていると、今度は、
――トっ、トっ、トっ、トっ……。
軽快な階段を上がる音が春樹の耳へと届いてくる。
その音で春樹は確信した。この家の中に何かが入ってきていると。
そして、その何かが段々と近づいてきているということも、なんとなくだが理解することができたのだった。
「……やばい、やばい、やばい……。私、こういうのダメなんだって」
布団の中で声を漏らす。
昔からホラー系は避けて生きてきた菜々緒である。
友達から勧められた映画は断り、遊園地に遊びに行ってもお化け屋敷だけは頑なに入ろうとしなかった。
夏の時期になってやるテレビのホラー特集のような特番も、誰かが先客で見ていようが問答無用でチャンネルを変えるくらいの徹底ぶりである。
そんな菜々緒が、この不可解な『何者か』の接近に対して、強気な態度をとることができないのも当然のことだった。
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