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「ど、どっか行って……」
春樹の弱気な態度を嘲笑うように、聞こえてくる足音は段々と大きくなっていき、やがて春樹の部屋の前で止まった。
扉越しに奴がいる……。
否が応でも理解した菜々緒がもはや神にも縋る思いで目を強く瞑った瞬間、
――ガチャンッ!! ……ギギィ……
ドアノブを強く下げたような大きな音と、年季の入った扉がゆっくりと開く得意の独特な音を奏でて、部屋の扉が開かれた。
それと同時に、怖さと驚きから叫びだしたくなった春樹だが、
「うぅぅぅぅぅ~~~……っ!?」
顔を枕に押し付けて、叫び声を必死に押し殺す。
叫びでもして相手に気づかれたくないからという思いからの必死の抵抗は空しく、部屋の外から聞こえてきていた足音は真っ直ぐ近づいてきて、
ピタリと、彼女の寝そべるベッドの前で静止した。
無音。ただ続く無音に菜々緒が辛抱溜まらず布団から少しだけ顔を出し、『ソレ』がいるベットの脇を確認してみると、そこには――
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