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◆誤解
◆誤解
そんな中性的な二人に、僕の姿はどう映っていたのだろう?
僕と佐川、名塚の二人との接点は全くなかった。席も離れている。
クラスの中で、僕はただの優等生に過ぎなかった。
中学の時の成績が悪すぎたせいで、私立の男子校にしか入れなかった僕は無我夢中で勉強をした。そのせいか、校内の模擬試験の結果は、学年の十位以内に入った。
成績優秀で、有名にはなったが、だからと言って、どうと言うものでもない。この高校の中では井の中の蛙だ。問題は、いい大学に受かるかどうかだ。
一方、佐川は、バンドをしているせいなのか、成績は中位でしかなかった。反対に名塚は、クラブ活動もしておらず、成績は、上位だった。二人とも国立の大学志望のクラスにいるのだから、それなりの受験勉強はしているはずだ。
だが、僕が優等生だったことで、佐川と名塚。それぞれと接触する機会が生まれた。
その前に、まず語っておかなければならない。
人間の発する言葉の魔力についてだ。
例えば、武骨な男子が、「名塚って、可愛いよな」と言っても、戯言に扱われたりする。
周囲の人間も「そうだな」と同調するだけだ。
だが、ある人間が発すると、まるで異なって聞こえてしまう。
それが、僕の場合だった。
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