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翌日、登校する足取りが重かった。教室で佐川に会えば、どんな顔をすればいいんだろう?
幸い、佐川とは席が離れているし、特に会う約束もしていない。
なんとか時間をやり過ごせる。だが、佐川からまた会いたいと言ってくれば、どう対応したらいいんだ。
もしかしたら、裏庭でのように触れ合う関係が、その先へと進展するかもしれない。
それは未知の領域だ。
だが、それでは、昨年、噂で聞いたクリスマスの夜に性の契りを交わしたという奴らと変わりないんじゃないのか。僕が軽蔑していたことに自ら足を踏み入れることになってしまう。
僕は、このような事態を想像できなかった。つまり、僕の人生にそんな道は広がっていなかったからだ。
そんな思いを抱えながら、僕は一時間目の授業の席に着いた。心臓の鼓動が高鳴る。
すると、
「おおっ」と言う驚嘆の声が教室内に湧き起こった。男ばかりなので、声量も重く大きい。
何をそんなに驚くことがあるんだ? と思い、顔を上げた。
生徒たちの視線は、教室の前・・扉の方に集まっている。
それは佐川だった。
佐川が、教室に入り、生徒たちの間を縫うようにして自分の席に着き、腰を掛けただけのことだ。
だが、昨日の佐川とは全く違って見えた。
その理由・・
佐川のトレードマークの長い髪をバッサリと切っている。
バッサリと言っても、かなり長かった髪だ。
ロングヘアーがセミロングに変わったという感じだ。
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