◆髪

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 だが、問題は、次の山村のセリフだった。 「それに、崎山と佐川・・できている、っていう噂だぜ」 「え・・」  僕はどう反応していいか分からなかった。言葉を理解するのに数分かかった気がする。  崎山は女好きなんだろ? だったら、どうして佐川と・・  そこまで考えて、あることを思い出した。  佐川に無理やりキスをした男のことだ。その男も女好きに加えて、男も好きだった。  更に山村はこう言った。 「佐川は・・ああ見えて、寂しがり屋なんだ」  佐川が寂しがり屋・・  確かに佐川には、そんなところがある。だが、それは僕が埋めてあげればいい。そう思っていた。 「女でいいじゃないか、寂しさを埋めるのは」  僕は一般的なことを口にした。  だが、山村は、 「いや、佐川は、女じゃダメなんだ」と、言って、 「佐川は、男が好きなんだよ」と続けた。  佐川は、男でないとダメ・・  その言葉に、僕はこれまでの何かがひっくり返るほどの衝撃を受けた。  佐川との思い出が、別の角度から書き換えられたような気がした。  佐川は、僕以外の男子とも・・そうだったのか。   山村が、どうしてそこまでのことを知っているのか。それとも山村の只の邪推なのか、僕が鈍感すぎたのか。  もっとその先の言葉を聞きたかったが、耳にするのが怖かった。  本当のことが知りたい。佐川自身の言葉が聞きたい。  けれど、その気持ちが高まるのに比して、  佐川の存在が急に遠く感じられ、次に、佐川にどんなふうに声をかければいいのか、言葉を見失っていた。
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