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近くの小田という男に、「北原、お前も名塚のファンなのか?」と指摘された。
僕が焦って否定すると、
「さっきから、ずっと見ているじゃねえか」と指摘された。
この会話を遠くの席だが、名塚に聞かれはしないか、冷や冷やものだった。
小田は「別にいいじゃねえか、男が好きでも」と言って、「俺の姉ちゃんは女子高だけど、クラスの女の子とできちまったらしいぜ」と笑った。
そんな話を聞くと、僕の心がそれほどは世間の常識とかけ離れているということでもなさそうだ、と感じた。そして、
「僕の美の感覚は正常だ」と、自分に言い聞かせた。
僕は次第に小柄な名塚をアイドルとして見るようになっていた。身近にいるアイドル。手を伸ばせば、触れることができるかもしれないアイドルだ。
その心の変化は、佐川が他の男・・崎山とできているという衝撃的な事実を耳にした自分の落ち込みを忘れたいがためのことのように思えた。
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