◆美女タイプと美少女タイプ

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 佐川と名塚を巡っては、武骨な男子の間で噂以外にも、体育の授業などの着替えの際には色んな話が交わされる。  佐川の場合は、 「体育の着替えの時にさあ、佐川の着替え方を見たかよ」 「ああ、見た見た。あれは女の着替え方だよな。ブラジャーを付けていないのが不思議なくらいだ」 「裸の時のさ、後姿なんて、俺の姉ちゃんより綺麗だぞ」  確かに、優雅な着替え方だし、後姿に至っては、美しすぎた。その白い肌は、少し見ただけでもハッとするほどだ。そう思ったのは、僕に限ったことではなかった。  一方、名塚は、佐川とは違って背が低い。その着替えも目立たないはずだが、 「あいつ、着替える時、照れてるんだぜ。男同士なのによ」 「ああ、めっちゃ、恥ずかしそうにしているよな」 「あんな風に照れられると、こっちの顔が赤くなるぜ」    気がつくと、僕も名塚の着替えに見入っていた。確かに、あれは男の着替え方ではない。周囲の目を意識している着替え方だ。  一部の噂では、女性用の下着を身に着けているとかもあったが、それは誤情報だった。  だが、同じ男性ものの下着でも着る人間によっては異なって見えるものだ。  ・・あの下着は、女性用でも男ものでもない。そう思った。  だったら、僕の目に映っているのは、何だというのだ。
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