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冷たい風と一緒に中に入ってきた陽太は、寒かったのだろう、頬が赤くなっていた。
二月下旬、暖かかった先週と違い、今日は冷え込んでいる。下ろされた髪から少しだけ覗く耳も赤い。
“どうぞ。入って”
そんな風に言わなくたって、陽太はずかずかと部屋に上がってくる。無造作に置かれた大きなスニーカーが、狭い玄関で一際その存在を主張する。
「色々買ってきたけど」
ワンルームの中央には、わたしの生活の拠点となるオレンジ色のこたつがある。
一人暮らし用のあまり大きくない丸いこたつ。陽太は当たり前のようにそれに足を突っ込み、手に下げていたコンビニの袋から、チューハイやらスナック菓子やらを並べ始めた。その中には、わたしの大好きなさけチーもある。
「たくさんありがと」
「おー」
卵焼きとグラスを持っていくと、陽太は顔までこたつの布団を引き上げていた。
顔だけが見えるその格好は、見た目が小型犬系の陽太に似合っていて、不覚にも可愛いと思ってしまう。
「やっぱこたつ最高ー」
布団に全身をすっぽり隠したままこてりと左頬をこたつにつけ、陽太が呟く。
伏せられた睫毛は影を作るくらい長くて、男のくせにずるい。
「陽太も買えば?」
「んー……ダメ人間になるからいい。こたつ恋しくなったら日葵んチ来るし」
「……ああ、そう」
最近うちによく来ているのは、こたつ目当てか。
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