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「うまっ」
豚キムチを頬張り陽太が声を上げる。
「つーか、白飯食べたい」
「ご飯食べてないの?」
「いや、食べたけど。これは欲しくなる」
「冷凍したのならあるけど。食べる?」
「食べる」
シュバッと立ち上がりキッチンへ向かう後ろ姿を見ながら、なんだかなぁと思う。
気にしてしまったのはわたしだけで、やっぱり陽太は気にも留めない。いや、そうだろうなとわかっていたけど、悔しいというか、なんていうか……いや、よくわかんないけど。
キッチンから投げ掛けられた「日葵はー?」には、いらないと答えておいた。
すっかり主食と化した豚キムチ丼を陽太が食べ終え、お互いチューハイが3本目になった頃、桃鉄は7年目の春を迎えた。
設定年数は30年。まだまだ序盤だ。
次の目的地は、今いる北海道とは真逆の九州。とりあえずぶっとぼう。
「あ、方向完璧かも」
ぶるるるると赤いヘリコプターが、南西の方向に飛んでいく。
「もうちょっともうちょっと……あ、止まっちゃった」
ヘリコプターは鳥取県で止まってしまった。
倉吉駅。駅名の隣に、温泉のイラストがある。三朝温泉だ。
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