1 こたつと日葵

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「うまっ」  豚キムチを頬張り陽太が声を上げる。 「つーか、白飯食べたい」 「ご飯食べてないの?」 「いや、食べたけど。これは欲しくなる」 「冷凍したのならあるけど。食べる?」 「食べる」  シュバッと立ち上がりキッチンへ向かう後ろ姿を見ながら、なんだかなぁと思う。  気にしてしまったのはわたしだけで、やっぱり陽太は気にも留めない。いや、そうだろうなとわかっていたけど、悔しいというか、なんていうか……いや、よくわかんないけど。  キッチンから投げ掛けられた「日葵はー?」には、いらないと答えておいた。  すっかり主食と化した豚キムチ丼を陽太が食べ終え、お互いチューハイが3本目になった頃、桃鉄は7年目の春を迎えた。  設定年数は30年。まだまだ序盤だ。  次の目的地は、今いる北海道とは真逆の九州。とりあえずぶっとぼう。 「あ、方向完璧かも」  ぶるるるると赤いヘリコプターが、南西の方向に飛んでいく。 「もうちょっともうちょっと……あ、止まっちゃった」  ヘリコプターは鳥取県で止まってしまった。  倉吉駅。駅名の隣に、温泉のイラストがある。三朝(みささ)温泉だ。
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